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前回が100kg×6回、今回は100kg×7回なら、成長したと考えてよいのでしょうか。
比較条件が近ければ、同じ重量で回数が増えた記録は成長の候補です。条件が違うと、その差は疲労やセット位置の違いでも説明できます。
前回が100kg×6回、今回は100kg×7回でも、休憩後の1セット目と別種目後の3セット目では単純比較できません。先に条件をそろえ、単日ではなく複数回の方向で読みます。
この記事の要点:
- 同じセットとは、種目・器具・重量基準・セット位置・RIR(用語集を新しいタブで開く)(限界までの余力)などをそろえた比較です。
- 見える変化は、同じ重量での回数、同じ回数での重量、同じ重量・回数での余力の3つです。
- 1回の増加だけでは、測定誤差やその日の揺れと切れません。
- 実務では、条件の近さ、RIR、再現、複数回の範囲を順に確認します。
- 推定1RM(用語集を新しいタブで開く)は概観用です。直近の判断は、同じ種目・同じ重量の実測回数も残します。
「前回と同じセットを比較するメリット|伸びを見逃さない記録術」では何を確認する?
前回が100kg×6回、今回は100kg×7回なら、成長したと考えてよいのでしょうか。関連資料 1「同じセット」とは何をそろえた比較か
ここでいう同じセットとは、単に種目名が同じという意味ではありません。少なくとも、次の条件を確認します。
- 同じ種目と器具
- 同じ重量の入力基準
- 同じセット位置
- 同じ左右・両側の記録方法
- 近い可動域(用語集を新しいタブで開く)とフォーム
- 近い反復テンポ
- 近いセット間休憩
- 一般的なログではウォームアップかワークセット(用語集を新しいタブで開く)か
- 限界までの余力、またはRIR
- そのセットより前に行った運動
読み方は、重量と回数以外の変数も負荷に入る、という整理です。抵抗トレーニングの負荷は、重量と総回数だけでは十分に表せません。 Scottらは、種目、重量、量、セット間休憩、反復速度など、複数の変数が実際のトレーニング負荷に関与すると整理しています。1
Coratellaも、重量・回数に加えて、限界まで行ったか、可動域、筋が働く長さ、各局面の時間、セット間休憩などを報告すべき変数として挙げています。2
条件を完全に同一にすることはできません。比較対象を絞ると、「種目や器具が違うために生じた差」を減らせます。次の行動は、上記リストを満たす記録だけを縦に並べることです。
記録は次回の判断材料に変換して初めて循環する
- 01記録する重量・回数・RIRを残す
- 02同条件で見る前回と今回を分けて確認
- 03差を言葉にする変化と条件をメモ
- 04次回へつなぐ記録を判断材料にする
同じセットを比較すると見える3つの変化
条件が近いとき、記録から拾える変化は次の3つです。いずれも1回で断定せず、余力とフォームをセットで見ます。
1. 同じ重量で反復数が増えた
前回が100kg×6回、今回が100kg×7回で、RIRやフォームも近ければ、同じ負荷で発揮できる反復能力が向上した可能性があります。
ただし、前回がRIR 2、今回がRIR 0なら、今回は単に限界へ近づいただけかもしれません。回数だけでなく、どれほどの余力で終了したかも確認します。
2. 同じ回数をより重い重量で行えた
前回が100kg×6回、今回が102.5kg×6回で、可動域・フォーム・RIRが近ければ、負荷を高めても同程度の反復を維持できた記録です。
一方、マシンを変更した、スクワットの深さが変わった、補助を受けたなどの違いがあれば、重量差だけから筋力向上を断定できません。
3. 同じ重量・回数をより大きな余力で終えた
重量と回数が変わらなくても、前回がRIR 1、今回はRIR 3なら、主観的には余力が増えています。
RIRには推定誤差があるため、1回の差を確定的な成長とは扱えません。同じ条件で同じ方向の変化が続くなら、重量・回数だけでは見えない改善の候補になります。
なぜ「前回より少し増えた」だけでは断定できないのか
結論は、小さな増加には能力変化以外も混ざる、です。測定値には、実際の能力だけでなく測定誤差が含まれます。 さらにトレーニング中のパフォーマンスは、疲労、学習、動機、休憩、フォームなどによっても変わります。1 2 5
次の数値は、標準化した1RM(用語集を新しいタブで開く)(1回挙上の最大重量)テストの再検査です。日常セットへそのまま当てはめないでください。比較的標準化しやすい1RMテストでさえ、毎回まったく同じ結果になるわけではありません。 Grgicらの系統的レビュー(用語集を新しいタブで開く)では、32研究・合計1,595人の1RMテストについて、ICC(用語集を新しいタブで開く)中央値は0.97と高い再検査信頼性を示しました。 一方、変動係数(用語集を新しいタブで開く)(CV)は0.5〜12.1%、中央値4.2%でした。3
示されたのは、集団内の順位は再現しやすい一方、個人値にはばらつきがあることです。ICCは級内相関係数、SEM(用語集を新しいタブで開く)は測定の標準誤差です。 ICCが高いことは、対象集団内で個人の相対的な順位が再現されやすいことを示しますが、個人の測定値が無誤差という意味ではありません。絶対的なばらつきはCVやSEMも併せて解釈します。小さな更新は本当の変化かもしれませんが、その日の揺らぎだけでも生じ得ます。
また、この1RMレビューで示された数値を、日常のサブマキシマルセット(最大下の通常セット(用語集を新しいタブで開く))へそのまま当てはめることはできません。通常のセットは1RMテストより条件が多様で、RIRや前段階の疲労も異なるためです。
MDCは「実用上重要な変化」と同じではない
結論として、MDC(用語集を新しいタブで開く)は誤差を超えやすいかどうかの境界であり、プログラム上の重要度ではありません。一般向けには「最小有意変化」と表現されることがありますが、測定学ではMDC(Minimal Detectable Change:最小検出可能変化)という用語が使われます。
MDCは、観察された差が測定誤差だけでは説明しにくいと判断するための境界です。 測定の標準誤差をSEMとすると、95%水準のMDCは一般に次の式で計算されます。6
MDC95 = 1.96 × √2 × SEM
ただし、SEMは対象者、測定方法、器具、プロトコルに対応した再検査データから求める必要があります。他集団の平均CVを借りて「自分は2.5kg増えたからMDCを超えた」と判断することはできません。
MDCは「誤差を超えた可能性」を扱う指標であり、その変化が競技やプログラム上どれほど重要かを示す基準でもありません。反対に、MDC未満の小さな変化が無価値という意味でもありません。
次の行動は、自分用のMDCを他集団の数字から作らないことです。日常のトレーニング記録では、正式な信頼性試験を行っていないことが多いため、厳密なMDC判定よりも、同条件の記録を複数回集めて傾向を見る方が現実的です。
1日の好記録より、複数回の方向性を見る
結論は、直前1回との差より、数回の範囲と中央の動きを見る、です。前回比は分かりやすい一方、直前の1回だけを基準にすると判断が極端になりやすくなります。
| セッション | ベンチプレス・第2セット | RIR |
|---|---|---|
| 1回目 | 100kg×6回 | 2 |
| 2回目 | 100kg×7回 | 2 |
| 3回目 | 100kg×6回 | 2 |
| 4回目 | 100kg×7回 | 2 |
4回目は3回目より1回増えていますが、過去全体を見ると6〜7回の範囲を行き来しています。この段階では、「1回分成長した」と断定するより、自分の通常変動の範囲かもしれないと考えるのが安全です。
その後、7〜8回が繰り返される、または重量を上げても6回を維持できるようになれば、基準自体が上方へ移動した可能性が強まります。
実務では次の順序で確認します。
- 今回と前回で比較条件が近いか
- 重量・回数だけでなくRIRも近いか
- 変化が次回以降も再現されるか
- 複数回の中央値や通常範囲が動いているか
- フォームや可動域を変えていないか
一度の自己ベスト(用語集を新しいタブで開く)は重要な観察値ですが、長期的な適応を単独で証明するものではありません。
%1RM表や推定1RMだけに頼らない
結論として、推定1RMは概観用です。直近の判断は実測の同じセットを残します。重量と回数から推定1RM(e1RM)を算出すると、異なる重量帯の記録を一つの尺度で見られます。ただし、推定値は実測値ではありません。
次の数値は、%1RM(用語集を新しいタブで開く)(1RMに対する割合)と限界反復(用語集を新しいタブで開く)の関係です。固定換算表を万人に当てはめられない、と読んでください。 Nuzzoらは269研究、7,289人、952件の限界反復テストを解析し、%1RMと最大反復回数の関係には個人差と種目差があることを示しました。 特にレッグプレスでは、同じ%1RMでもベンチプレスより多く反復できる傾向がありました。4 一方、研究群は男性群66%、健康者97%、平均年齢59歳未満92%、抵抗トレーニング経験者60%に偏っており、高齢者や臨床集団への一般化には限界があります。
この研究は個々のe1RM計算式を直接検証したものではありませんが、反復回数と%1RMを一つの固定表だけで変換する際の不確実性を示しています。
推定1RMは長期的な概観に使い、直近の判断では「同じ種目・同じ重量で何回できたか」も残すと、計算式だけに依存しない比較ができます。
比較を崩しやすい記録パターン
条件が崩れると、数字の増減は別物になります。次の4つを先に避けます。
セット番号を無視する
1セット目と4セット目では、蓄積した疲労が異なります。前回の第1セットと今回の第3セットを直接比較すると、筋力変化とセット内疲労を分けにくくなります。
マシンや入力方法を混ぜる
同名のマシンでも、製品、滑車、アーム構造などが異なれば、表示重量の意味が同じとは限りません。片手に持つ重量と左右合計重量を混ぜることも避けます。
左右を入れ替える
片側種目では、前回の左と今回の右を比べても、同じ側の縦断比較にはなりません。左右を独立して記録し、物理的に同じ側を追跡します。
フォーム変更を成長として扱う
可動域を短くした、反動が増えた、補助を使った場合は、重量や回数が増えても同一条件とはいえません。フォーム変更自体が意図的なら、記録上の新しい基準として扱います。
kageの「前回 同セット」は何を比較するか
ここからは研究上の一般論ではなく、kageの製品仕様です。
kageの標準セット画面では、比較候補がある場合に「前回 同セット」として、前回の重量・実際の回数・RIRを表示します。比較候補は、少なくとも次の条件を合わせます。
- 同じ種目
- 同じ
trackingMode(通常/左右別) - 同じ論理セット(用語集を新しいタブで開く)番号
マシンを使う記録では、マシンの識別情報と重量入力方式も比較範囲に含まれます。別のマシンや異なる入力方式の重量を、同じ負荷として自動的に接続しません。
左右別記録(用語集を新しいタブで開く)の前回候補は、まず同じ論理セット番号を合わせ、その後に同じ物理側を対応させます。現在が左なら前回の左、現在が右なら前回の右です。片側だけで終了した不完全なセットは、前回ゴーストの基準から除外されます。
条件に合う過去記録がなければ、kageは前回比較を0や推測値で補わず、比較表示自体を隠します。
また、kageの長期分析では、1〜2個の観察値をベースラインとして表示し、トレンドとは呼びません。3〜5個では最初と最新を比べ、6個以上では最初3個の中央値と最新3個の中央値を比較します。これはkageの表示上の保守的なルールであり、「3回あれば科学的に成長が証明される」という意味ではありません。
前回比較を使うときの実践チェック
結論は、前回をノルマにしないことです。次回のセット前には、前回の数字をそのまま超えようとする前に、次を確認してください。
- 比較対象は同じ種目・器具・セット番号か
- 前回の重量、回数、RIRはいくつか
- 今回の可動域とフォームを維持できるか
- 前回と休憩時間や種目順が大きく違わないか
- 1回の上下ではなく、最近数回の範囲はどうか
前回記録は、必ず超えなければならないノルマではありません。その日の状態を無視して回数を追加すると、比較条件そのものが崩れることがあります。
まとめ
同じセット比較の利点は、種目・記録方法・セット位置をそろえて縦の変化を見やすくすることです。
単日の増減には測定誤差や通常変動が含まれます。1RMのような標準化されたテストでも再検査値は変動し、通常のトレーニングセットではさらに多くの条件が影響します。
同じ重量での回数、同じ回数での重量、RIRをセットで記録し、複数回の方向性を確認してください。前回の1点を超えることより、比較可能な記録を積み重ねることが、伸びを見逃さないための基盤になります。
参考文献
- Scott BR, Duthie GM, Thornton HR, Dascombe BJ. Training Monitoring for Resistance Exercise: Theory and Applications. Sports Medicine. 2016. DOI: 10.1007/s40279-015-0454-0
- Coratella G. Appropriate Reporting of Exercise Variables in Resistance Training Protocols: Much more than Load and Number of Repetitions. Sports Medicine - Open. 2022. DOI: 10.1186/s40798-022-00492-1
- Grgic J, Lazinica B, Schoenfeld BJ, Pedisic Z. Test-Retest Reliability of the One-Repetition Maximum (1RM) Strength Assessment: a Systematic Review. Sports Medicine - Open. 2020. DOI: 10.1186/s40798-020-00260-z
- Nuzzo JL, Pinto MD, Nosaka K, Steele J. Maximal Number of Repetitions at Percentages of the One Repetition Maximum: A Meta-Regression and Moderator Analysis of Sex, Age, Training Status, and Exercise. Sports Medicine. 2024. DOI: 10.1007/s40279-023-01937-7
- Hopkins WG. Measures of Reliability in Sports Medicine and Science. Sports Medicine. 2000. DOI: 10.2165/00007256-200030010-00001
- Weir JP. Quantifying Test-Retest Reliability Using the Intraclass Correlation Coefficient and the SEM. Journal of Strength and Conditioning Research. 2005. DOI: 10.1519/15184.1
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この記事は一般的なトレーニング情報であり、診断、治療、個別の医療助言ではありません。単日の記録から、回復状態、傷害、オーバートレーニングを診断することはできません。
