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e1RM(用語集を新しいタブで開く)トレンドグラフは、最大下セットの重量と回数から計算した推定値を時系列に並べたものです。読む順番は、生のセッション点、計算元セット、比較条件、複数点の中央値です。
1点の上昇を実測1RM(用語集を新しいタブで開く)更新、1点の低下を筋力低下や停滞とは決めません。グラフは推定値の経過を確認する道具で、現在の最大挙上重量を直接測定するものではありません。
「e1RMトレンドグラフの読み方|単日の上下と長期変化を区別する」では何を確認する?
e1RMトレンドグラフは、最大下セットの重量と回数から計算した推定値を時系列に並べたものです。関連資料 1この記事の要点
- 1点の上下は実測1RMの更新や停滞ではない。推定値の経過を見る。
- 先に生点と計算元セットを見る。移動中央値は補助線である。
- 種目、回数帯、余力(RIR(用語集を新しいタブで開く))が変わると、同じ式でも点の意味が変わる。
- 比較条件(scope)が揃っているかを確認してから、短期と長期を分ける。
- PR(用語集を新しいタブで開く)マーカーは元セットの一般PR表示であり、e1RM史上最高値ではない。
e1RMの点は「推定値」である
e1RMはestimated one-repetition(用語集を新しいタブで開く) maximumの略です。最大下セットから推定した1回最大挙上重量を指します。kageが採用するEpley式では、次のように計算します。
e1RM = 重量 ×(1 + 回数 ÷ 30)
100kgを5回なら約116.7kgです。ただし、116.7kgを実際に挙げたことにはなりません。式、回数帯、種目、個人、余力によって実測1RMとの差が変わり得ます。
計算方法と実測1RMとの違いは「推定1RM(e1RM)とは?」で詳しく説明しています。本稿では式の選び方ではなく、同じ式で作られた時系列の読み方を扱います。
単日の上下と反復した方向性は別に読む
実線=生点 細破線=中央値102 太破線=全体の方向
式が同じでも、種目と回数帯で意味が変わる
回数から1RMを推定する式は、一つの普遍的な人体法則ではありません。同じ式でも、種目と検証集団が変われば点の意味は変わります。
読み方の要点は次です。示されたのは特定種目・特定集団での推定精度です。全種目に同じ関係があるとは言えません。
Mayhewらは、14週間のトレーニング後の大学生男性184人・女性251人のベンチプレスから指数式を作り、別の比較可能な男性70人・女性101人、計171人でcross-validationしました。2 これはMayhew式の元になったベンチプレス研究で、全種目に同じ関係が当てはまることを示しません。
LeSuerらは未訓練学生67人のベンチプレス、スクワット、デッドリフトで7種類の1RM推定式を比較しました。予測値と実測値の相関(用語集を新しいタブで開く)がいずれも高くても、多くの式に系統誤差があり、全式がデッドリフトを過小評価しました。3
相関が高いことと、個々の値が実測値へ一致することは別です。「Epley式が常に最良」「どの式でも同じ」とは言えません。
高回数側ほど慎重に読む
回数帯が大きく変わった点は、筋力そのものより推定条件の差かもしれません。研究が示すのは精度の傾向です。全式共通の回数境界ではありません。
70人を対象にチェストプレスとレッグプレスを調べた研究では、5RMからの1RM予測は比較的良好でしたが、10RM・20RMでは精度が低下しました。4
さらに、269研究・7289人・952テストをまとめた系統的レビュー(用語集を新しいタブで開く)とメタ回帰(用語集を新しいタブで開く)では、%1RM(用語集を新しいタブで開く)と限界反復(用語集を新しいタブで開く)回数の関係に種目・個人差がありました。5
これらは「5回なら正確」「12回を超えると無効」という全式共通の境界を示しません。グラフ内で回数帯が大きく変わったときは、上昇・低下の一部が推定条件の違いかもしれないと考え、元セットを確認します。
生の点を先に見る
移動中央値だけを見ると、日ごとの上下が見えなくなります。まず各セッションの生点を見ます。
- 点の日付
- e1RM値
- 計算元の重量×回数
- RIR
- カード上部に表示されるマシンscope
- PR表示の有無
例えば同じe1RM 120kgでも、90kg×10回と100kg×6回では元セットが異なります。Epley式にはRIRが入らないため、RIR 0とRIR 3でも重量・回数が同じなら同じe1RMです。
点の高さだけでなく、「どのセットから作られた点か」を確認することで、回数帯や余力の変化を見落としにくくなります。
移動中央値は生点の代わりではない
3セッション移動中央値は、連続する3点を小さい順に並べた中央の値です。例えばe1RMが100、115、103kgなら中央値は103kgです。115kgという単発の高値の影響を抑えて、最近の中心を見せます。
ただし、中央値は測定誤差を取り除く処理ではありません。3点すべてが異なる器具・可動域(用語集を新しいタブで開く)なら、滑らかな線にも比較上の意味はありません。生点を残し、中央値を補助線として読みます。
次の数値は実測1RMの再検査変動です。e1RM式の誤差ではありません。個人共通の変化判定線にもできません。
実測1RMの32研究・1595人をまとめたレビューでは、ICC(用語集を新しいタブで開く)は0.64〜0.99、中央値0.97、CV(用語集を新しいタブで開く)は0.5〜12.1%、中央値4.2%でした。1 これはe1RM式の誤差ではありませんが、実測1RMにも再検査変動があることを示します。
CV中央値4.2%を「グラフが4.2%動けば真の変化」という個人共通の線にはできません。種目、対象、手順が異なる研究の中央値だからです。
短期の上下と長期変化を分ける
短期は「直前と同じ条件か」、長期は「期間内の生点と中央値の流れか」を分けます。短期の上下を見るときは、最新点と直前数点の条件差を確認します。
- 同じ種目・器具か
- 同じ重量入力方式か
- 近い回数帯か
- RIRは近いか
- 種目順、可動域、テンポ、休憩は近いか
- 意図的な軽減日ではないか
長期変化を見るときは、期間の最初と最後だけでなく、その間の生点と中央値を見ます。期間を変えて結論が逆転するなら、短期と長期が答える問いを分けます。
単日の重量・e1RM低下の確認は「重量が落ちた日は失敗?」、同じセット位置での比較は「前回と同じセットを比較するメリット」を参照してください。
PRマーカーとe1RM最高値を混同しない
グラフ上のPRマーカーは、必ずしもe1RMの史上最高値を意味するものではありません。
このマーカーは、元セットにアプリのPR判定(用語集を新しいタブで開く)が付いていることを示す場合があります。重量PRや同重量rep PRなどでPRになったセットが、そのセッションのe1RM点として採用されることがあるためです。
したがって、PRマーカーを「この点がe1RM史上最高値」と読み替えないでください。反対に、e1RMが期間内最高でも、一般PR判定の条件によってマーカーの意味は異なります。最高値はグラフのbest値と生点で確認します。
e1RMグラフを読む6段階
次は長期変化を証明する統計手順ではなく、グラフの誤読を減らす編集部提案です。上から順に確認します。
1. 種目と表示される比較scopeを確認する
種目名と、カード上部に表示されるマシンscopeを確認します。通常・左右別のtrackingModeと重量入力方式も集計scopeには使われますが、現行カードには表示されません。Analysisだけでscope全体を再確認できない点を残したまま、グラフから条件一致を推測しないでください。
2. 有効な観測数を見る
カレンダー週数ではなく、実際にグラフへ入ったセッション点数を見ます。点が1〜2個ならbaselineとして扱います。
3. 生の点と元セットを見る
重量、回数、RIRへ戻り、推定条件が近いか確認します。
4. 3セッション中央値を見る
単発の上下を残したまま、最近3点の中心がどちらへ動いたかを補助的に見ます。
5. 期間changeの計算法を確認する
開始と終了のどの点を使ったかを確認し、1点の差と3点中央値の差を混同しません。
6. 次の同条件を追加する
グラフだけで原因を決めず、近い条件の次回記録を増やします。重量、回数、RIR、フォームなどを同時に大きく変えない方が比較しやすくなります。
kageのe1RMトレンド仕様
ここからは2026年9月2日時点のkage仕様とiOS・Android実装です。
kageの現行Analysis Performanceカードは、選択種目のe1RMグラフを表示します。本稿ではこのe1RMカードだけを説明します。詳細仕様に記載されたトップ重量・同重量回数への切替は現行両OSに未実装で、利用できる機能として扱いません。
比較scopeは、全履歴で最新のtrackingMode、マシンcomparison identity、loadEntryModeに合う記録です。そのscopeのうち、選択した4・12・26週に入るセッションを使います。
グラフ候補は、完了したPR対象typeのnormal(用語集を新しいタブで開く)、superset(用語集を新しいタブで開く)、AMRAP(用語集を新しいタブで開く)セットで、回数1〜12です。timed(用語集を新しいタブで開く)、drop、myo、partial、0回は除外します。左右別は両側完了が必要で、左右のe1RMの低い側を使います。各セッションの候補から最大e1RMを1点だけ採用します。
1〜12回は製品上の分析範囲で、12回が科学的な妥当性境界という意味ではありません。RIRはinspectorへ表示しますが、Epley式には入りません。
生のセッション点と3セッション移動中央値を表示し、中央値は3点目から始まります。観測1〜2点はbaseline、3〜5点のchangeは期間内の最初と最新、6点以上は最初3点と最新3点の中央値で計算します。3点・6点も製品上の表示ルールで、真の変化が確定する科学的閾値ではありません。
各点のinspectorでは、日付、e1RM、元セットの重量×回数、RIR、PR表示を確認できます。マシンscopeは各点ではなくカード上部の共通表示です。trackingModeとloadEntryModeは集計keyですが、現行カード上では確認できません。PR表示は元セットに一般PRフラグがあることを示し、e1RM固有PRとは限りません。
期間選択の境界は、UTCオフセットが変わる期間をまたぐと、現行iOSとAndroidでずれる可能性があります。iOSはカレンダー週、Androidは固定秒数で4・12・26週の開始点を求めるためです。
本稿の限界
推定式研究はベンチプレスなど限られた種目と集団が中心で、古い研究を含みます。Nuzzoらのレビューも特定のEpley式や非限界セットを直接検証したものではありません。実測1RMの信頼性をe1RM誤差へ転用できません。
六段階の読み方と近い条件での比較は編集部提案です。kageのEpley式、1〜12回、3セッション中央値、3・6点のchangeルール、PRマーカーは製品仕様で、実測筋力、筋肥大(用語集を新しいタブで開く)、停滞、疲労または原因を診断しません。
まとめ
- e1RMは実測1RMではなく、重量と回数から作る推定値
- グラフは生点、元セット、比較scope、中央値の順で読む
- 式が同じでも種目・回数帯・RIRの違いを確認する
- 3セッション中央値は単発値の影響を抑える補助で、誤差を除去しない
- CV中央値4.2%、1〜12回、3・6点を科学的な真の変化閾値にしない
- kageのPRマーカーは元セットの一般PRで、e1RM固有PRとは限らない
参考文献
- Grgic J, Lazinica B, Schoenfeld BJ, Pedisic Z. Test-Retest Reliability of the One-Repetition Maximum (1RM) Strength Assessment. Sports Med Open. 2020. DOI: 10.1186/s40798-020-00260-z
- Mayhew JL, Ball TE, Arnold MD, Bowen JC. Relative Muscular Endurance Performance as a Predictor of Bench Press Strength in College Men and Women. J Strength Cond Res. 1992. DOI: 10.1519/00124278-199211000-00002
- LeSuer DA, McCormick JH, Mayhew JL, Wasserstein RL, Arnold MD. The Accuracy of Prediction Equations for Estimating 1-RM Performance in the Bench Press, Squat, and Deadlift. J Strength Cond Res. 1997. DOI: 10.1519/00124278-199711000-00001
- Reynolds JM, Gordon TJ, Robergs RA. Prediction of one repetition maximum strength from multiple repetition maximum testing and anthropometry. J Strength Cond Res. 2006. DOI: 10.1519/R-15304.1
- Nuzzo JL, Pinto MD, Nosaka K, Steele J. Maximal Number of Repetitions at Percentages of the One Repetition Maximum: A Meta-Regression and Moderator Analysis of Sex, Age, Training Status, and Exercise. Sports Med. 2024. DOI: 10.1007/s40279-023-01937-7
根拠の選定・更新方法は編集・エビデンス方針をご覧ください。
この記事は一般的なトレーニング情報であり、筋力低下、停滞、傷害、疾病の診断や個別の医療助言ではありません。
