文中の点線付き用語を選ぶと、筋トレ・記録用語集を新しいタブで確認できます。
筋トレ中の音楽は、気分を整え、きつさの感じ方を少し変え、種目によっては反復数を増やすことがあります。ただし筋トレ固有の試験は小さく、結果は混在します。すべての人、種目、セットで反復数や最大筋力が上がるわけではありません。心拍への平均効果は明確ではなく、長期の筋力・筋肥大(用語集を新しいタブで開く)を増やすかは別の問いです。
実務では、音楽を成果の保証ではなく環境設定として扱います。研究を読むときは、「音楽に効果があるか」ではなく、何を測った効果なのかを分けます。
- 運動全般では、音楽に快感情・パフォーマンス・知覚努力への小〜中程度の平均効果がある
- 心拍への平均効果は明確ではなく、筋トレでは反復数が増える場合と変わらない場合が混在する
- 気分、知覚努力、反復数、生理指標は別々に読む
- 急性の変化を、長期の筋力・筋肥大効果へ置き換えない
- 周囲の合図やフォーム確認が必要な場面では、音量を下げるか再生しない選択も妥当である
「筋トレ中の音楽は何に影響する?気分・知覚努力・パフォーマンスの研究」では何を確認する?
筋トレ中の音楽は、気分を整え、きつさの感じ方を少し変え、種目によっては反復数を増やすことがあります。関連資料 1図解の参照資料 3件
音楽研究で測られる四つの結果
| 領域 | 主な指標 | 読むときの注意 |
|---|---|---|
| 心理 | 快・不快、楽しさ、動機づけ、自己申告の集中 | 客観的な注意力やフォームとは限らない |
| 知覚 | RPE(用語集を新しいタブで開く)、きつさ | 反復数や心拍と同じではない |
| パフォーマンス | 反復数、最大筋力、パワー、完了時間 | 種目・強度・課題に依存する |
| 生理 | 心拍、酸素消費、乳酸、筋活動 | 良い方向が一つに決まるわけではない |
一つが変わっても、他が同じとは限りません。気分が良かったから筋力も上がった、とは言えません。心拍が変わらないから音楽は無効、とも言えません。
音楽研究の条件と、快感情0.48、パフォーマンス0.31、知覚努力0.22、酸素消費0.15、心拍0.07の効果量とそれぞれの95%信頼区間を分けて読む図
READER QUESTION「音楽に効果があった」は、何が変わったという意味?
右ほど音楽に有利な平均方向。割合変化ではありません。点=標準化平均効果g、線=95%信頼区間。
結論平均的に有利な結果があっても、条件・指標・研究で一様ではなく、長期効果とも限りません。
運動全般では小〜中程度の平均効果
読み方は次のとおりです。運動全般の平均効果であり、筋トレ中だけの数値ではありません。効果量(用語集を新しいタブで開く)gは標準化された差で、反復数の増加率ではありません。
2020年の多水準メタ解析(用語集を新しいタブで開く)は、139研究・3599人・598効果量を統合しました。音楽ありは、快感情でg=0.48、パフォーマンスでg=0.31、RPEの好ましい変化でg=0.22、酸素消費でg=0.15でした。一方、心拍はg=0.07、95%信頼区間(用語集を新しいタブで開く)−0.03〜0.16で有意な利益を確認できませんでした。1
これはランニング、サイクリング、スポーツ、筋力課題などを含み、音楽を課題前、ウォームアップ中、運動中などに提示した研究が混在する運動全般の平均です。筋トレ中だけの効果量ではなく、g=0.31を「自分の反復数が31%増える」と読むこともできません。
音楽が影響し得る経路として、覚醒水準の調整、注意を身体感覚からそらすこと、感情反応、動作とリズムの同期などが提案されています。2 ただし、これらは条件により重なり、高強度ではきつさから注意をそらす効果が小さくなる可能性があります。機序の候補を、個人の原因確定に使わないでください。
好きな音楽のメタ解析は有利な方向だが、数値は確定的に扱えない
読み方は、方向性は有利でも、数値を確定値として使わない、です。レビュー同士でも対象と課題が違うため、結論の強さは揃いません。
2026年巻号の系統的レビュー(用語集を新しいタブで開く)・メタ解析は41研究・855人をまとめ、好みの音楽(用語集を新しいタブで開く)(preferred music)は好みではない音楽または無音と比べ、RPE、動機づけ、感情、筋持久力、最大筋力、パワーで平均的に有利な方向を報告しました。3
ただし、異質性はアウトカムによりI²=61〜96%と高く、動機づけ、筋持久力、パワーなど一部には出版バイアス(用語集を新しいタブで開く)の可能性がありました。好みではない音楽との単独比較も一貫しません。さらに論文の抄録と本文の一部で統合効果量の値・符号が整合しておらず、2026年9月時点で正式訂正は確認できません。したがって本稿は、効果量を確定値として掲げず方向性だけを採用します。
さらに、成人レクリエーション競技者の12研究をまとめた別の2025年メタ解析では、各研究は10〜25人と小規模で、好みの音楽による平均心拍とRPEの有意差(用語集を新しいタブで開く)を確認できませんでした。4 対象、対照条件、課題、尺度の違いにより、レビュー同士でも結論の強さは変わります。
好みの音楽、自分で選んだ音楽、好みではない音楽、無音の違いと個別研究の詳細は「好きな音楽と好みではない音楽で気分・RPE・反復数は変わる?」で分けて扱います。
筋トレ固有の研究は「効く種目」と「変わらない指標」が混在する
読み方は、種目と指標で結果が分かれる、です。好きな選曲と好みでない選曲の差であり、無音との差ではありません。
訓練者19人が、スクワット、ベンチプレス、デッドリフト、ベントオーバーロウを各3セット限界まで行った2026年のクロスオーバー(用語集を新しいタブで開く)研究では、自分で選んだ音楽(self-selected music(用語集を新しいタブで開く))の条件でスクワットとデッドリフトの反復数が多くなりました。一方、ベンチプレスとロウの反復数、RPE、心拍、筋活動、筋酸素、換気には明確な差がありませんでした。6
自己申告の集中とエネルギー感は自分で選んだ条件で高かったものの、この集中は客観的な注意課題ではありません。無音条件もないため、「音楽自体の効果」ではなく、好きな選曲と好みでない選曲の差です。
訓練男性20人の反復測定研究では、自分で選んだ音楽でスクワットジャンプの一部指標は上がりましたが、跳躍高、ベンチプレス反復数、ベンチのRPEには差がありませんでした。気分尺度では活力だけでなく緊張と疲労も高く、気分が一方向に改善したとは言えません。5
小標本の好結果は追試で再現しないことがある
読み方は、小さな試験の好結果は、そのまま再現するとは限らない、です。単一研究から「もう1回できる」と決めないでください。
好みの音楽と好みではない音楽を比べたベンチプレス研究では、訓練男性12人の先行試験が75%1RM(用語集を新しいタブで開く)での反復数増加を報告しました。しかし、その研究を対象にした事前登録済み追試では、訓練男性28人の近似再現(close replication)で反復数差を確認できず、男女47人の拡張試験でも反復数差を確認できませんでした。7
追試論文は2024年4月の正誤表で解析値を修正し、近似再現の効果をdz=−0.12、元研究との効果量の非互換性をp=0.007としましたが、「元の結果は再現しなかった」という解釈は変わっていません。正誤表と本文でz値の符号が一致しないため、本稿では符号を採用しません。単一の小規模研究だけから、好きな音楽なら必ずもう1回できるとは言えません。
RPEが下がらなくても反復数は増え得る
音楽条件で反復数が増えても、RPEが下がるとは限りません。逆に、気分や動機づけが良くても、反復数が変わらない場合があります。
RPEは、その課題で感じた努力・きつさの尺度です。セット終了時のRIR(用語集を新しいタブで開く)は「あと何回できたと思うか」であり、同じ概念ではありません。Kageで任意入力できるセッション全体の努力度(1〜10)も、採用研究が使うBorg RPEと同一尺度として比較できません。
長期の筋力・筋肥大効果は分かっていない
ここで扱った主要な筋トレ研究は、1回または少数回の実験セッションにおける急性反応(用語集を新しいタブで開く)です。音楽を聴く群と聴かない群を数か月比較し、筋力や筋肥大の長期適応(用語集を新しいタブで開く)が増えるかを直接示すものではありません。
音楽である日に1回多く反復できても、長期の総トレーニング量、回復、漸進性、技術がどう変わるかは別に確認する必要があります。「音楽で筋肥大する」「最大筋力が伸びる」と結果を保証しないでください。
KageでBGMを使うときの考え方
次の行動は、BGM(用語集を新しいタブで開く)を成果の処方ではなく環境設定として扱うことです。高重量で周囲の合図を聞く必要がある、フォーム確認へ注意を向けたい、音楽が気になるといった場面では、音量を下げるか再生しない選択も妥当です。
2026年9月時点のKageでは、Kageが提供する曲のカタログからジャンルを選び、曲ごとに「再生対象」をオン・オフして、対象の曲をカタログ順に繰り返し再生します。個人の音楽ファイルや外部サービスの曲を取り込む機能、曲順の手動変更、好みや種目に応じた自動選曲はありません。
BGMはセッション開始時に自動では再生されません。曲は先にダウンロードしておく必要があり、ダウンロードが終わっただけでも再生は始まりません。再生は端末内に保存した曲を使います。再生の継続は、端末、OS、イヤホン、着信や他アプリの音声といった状況に左右されます。
また、再生したジャンル・曲・無音といった条件をセッション記録へ自動保存する機能、気分や音楽の好み、研究用のRPEを構造化して記録する機能、BGM別のパフォーマンス分析もありません。KageのBGMを再生することは、研究でいう「好みの音楽」条件へ自動的に該当するわけではありません。
本稿の限界
メタ解析には運動様式、音楽条件、対象、指標に加え、課題前・ウォームアップ中・運動中という提示時点の大きな違いがあります。筋トレ固有研究は小標本・急性試験が中心で、好みの音楽、自分で選んだ音楽、好みのジャンルも同じ操作ではありません。
研究結果は集団平均で、個人の当日パフォーマンスを予測しません。KageのBGM再生機能が気分、RPE、反復数、筋力、筋肥大または継続を改善するかを直接検証した試験もありません。
まとめ
- 運動全般では音楽に快感情、パフォーマンス、RPEへの小〜中程度の平均効果がある
- 心拍への平均効果は2020年メタ解析で明確でなかった
- 筋トレでは反復数が増えた研究と、変わらなかった研究・追試が混在する
- 気分、RPE、反復数、生理指標は別々に読む
- 急性効果を長期の筋力・筋肥大効果へ置き換えない
- Kageは提供カタログのBGMを使うが、BGM条件をセッションへ保存・分析しない
参考文献
- Terry PC, Karageorghis CI, Curran ML, Martin OV, Parsons-Smith RL. Effects of music in exercise and sport: A meta-analytic review. Psychol Bull. 2020. DOI: 10.1037/bul0000216
- Karageorghis CI, Priest DL. Music in the exercise domain: a review and synthesis (Part I). Int Rev Sport Exerc Psychol. 2012. DOI: 10.1080/1750984X.2011.631026
- Niering M, Zirkel B, Munkelt P, et al. Effects of preferred music listening on physical and psychological parameters in sports: a systematic review and meta-analysis with meta-regression. BMC Sports Sci Med Rehabil. 2025 Dec 22 [online]; 2026;18:44. DOI: 10.1186/s13102-025-01470-2
- Herodek RT, Aleksić Veljković AZ, Živković MD, et al. Effects of preferred music on internal load in adult recreational athletes: a systematic review and meta-analysis. J Sports Med Phys Fitness. 2025. DOI: 10.23736/S0022-4707.24.16178-6
- Biagini MS, Brown LE, Coburn JW, et al. Effects of self-selected music on strength, explosiveness, and mood. J Strength Cond Res. 2012. DOI: 10.1519/JSC.0b013e318237e7b3
- Vinovrski MF, Moll RE, Odebode JO, et al. Physiologic and Perceptual Responses During Resistance Exercise With Self-Selected and Nonpreferred Music. J Strength Cond Res. 2026. DOI: 10.1519/JSC.0000000000005265
- Hutchinson JC, Murphy J, De Lucia B, et al. Effects of Preferred versus Nonpreferred Music on Bench Press Performance: A Replication and Extension Study. Commun Kinesiol. 2024. DOI: 10.51224/cik.2024.60
根拠の選定・更新方法は編集・エビデンス方針をご覧ください。
この記事は健康成人向けの一般的なトレーニング情報であり、個別の医療・競技処方ではありません。周囲の合図や安全確認が必要な環境では、施設ルールと状況を優先してください。
