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好きな音楽で反復数や気分が良くなった研究はあります。ただし、好みではない音楽や無音との差は研究ごとに一貫せず、ベンチプレスの先行研究は事前登録済み追試で再現しませんでした。
「好き」という条件は有望な候補であって、反復数増加やRPE(用語集を新しいタブで開く)低下を保証する処方ではありません。 比較するなら、条件名を分け、反復数・主観的努力度(RPE)・気分を別々に見ます。
要点は次のとおりです。
- 好みの音楽(用語集を新しいタブで開く)(preferred)、自分で選んだ音楽(self-selected)、好みではない音楽(non-preferred)、実験者指定、無音は別条件です
- メタ解析(用語集を新しいタブで開く)では平均的に有利な方向もありますが、ばらつきと数値の扱いには注意が必要です
- 反復数、RPE、気分、心拍は同じ方向へ動くとは限りません
- ベンチプレスの先行小標本の好結果は、事前登録済み追試で再現しませんでした
- 自分で比べる場合は条件を二つに固定し、複数回の結果を見ます
最初に、研究で使われる音楽条件を分けます。
好きな音楽と好みではない音楽で気分・RPE・反復数は変わる?
好きな音楽で反復数や気分が良くなった研究はあります。関連資料 1preferredとself-selectedは同じとは限らない
| 研究用語 | 一般的な操作 | 注意点 |
|---|---|---|
| preferred music(好みの音楽) | 本人が好む曲・ジャンルと評価した音楽 | その日の好みや課題適合まで一定とは限らない |
| self-selected music(用語集を新しいタブで開く)(自分で選んだ音楽) | 本人が実際に曲やプレイリストを選ぶ | 選好に加え、テンポ、記憶、歌詞なども変わる |
| non-preferred music(好みではない音楽) | 本人が好まない曲・ジャンルと評価した音楽 | 単なる「他人が指定した曲」とは限らない |
| experimenter-selected music(実験者指定) | 研究者が条件として選んだ音楽 | 本人にとって好き・嫌いのどちらかは別途測定が必要 |
| no music(無音) | 無音または通常環境音 | ジムの背景音まで完全に統一できるとは限らない |
「指定された音楽」には、本人が嫌いと答えた曲、研究者が選んだ中立曲、テンポを合わせた曲などが含まれ得ます。好みではない音楽をすべて「指定曲」とまとめると、何との比較か分からなくなります。
音楽あり・なしを含む運動全般の平均効果は「筋トレ中の音楽は何に影響する?」で扱い、本稿では選好条件の比較へ絞ります。
音楽の影響は条件と測る指標で変わる
- 01音楽の条件好み・tempo・音量
- 02実施の条件種目・強度・環境
- 03本人の反応気分・努力感・集中
- 04記録して比較有無を同じ指標で見る
メタ解析では好みの音楽が有利な方向だが、ばらつきが大きい
読み方は次のとおりです。平均の向きと、ばらつき・対象の違いを分けて見ます。平均が有利でも、すべての種目・対照条件で同じとは言えません。
41研究・855人を統合した2026年巻号のメタ解析では、好みの音楽は好みではない音楽または無音と比べ、平均的にRPE、動機づけ、感情、筋持久力、最大筋力、パワーで有利な方向を示しました。2
一方、異質性はアウトカムによりI²=61〜96%と高く、動機づけ、筋持久力、パワーなど一部には出版バイアス(用語集を新しいタブで開く)の可能性がありました。好みの音楽と好みではない音楽だけの比較も一貫しません。さらに抄録と本文の一部で統合効果量(用語集を新しいタブで開く)の値・符号に内部不整合があり、2026年9月時点で正式訂正は確認できません。そのため本稿は方向性だけを採用し、精密な標準化平均差(用語集を新しいタブで開く)(SMD)を確定値として掲載しません。
成人レクリエーション競技者の12研究をまとめた別の2025年メタ解析では、各研究の参加者は10〜25人で、好みの音楽による平均心拍とRPEの有意差(用語集を新しいタブで開く)を確認できませんでした。3 レビューが扱う対象、運動、対照条件が違えば、平均結果も変わります。
反復数とRPEが同時に変わった研究
ここでは、好きなジャンル条件で反復数とRPEが同時に動いた一例を見ます。急性テストの結果であり、普段のセッション全体への一般化はできません。
若年男性20人を対象に、好みのジャンル、好みではないジャンル、無音の順序を無作為化した反復測定研究では、好みの条件で握力、ラットプルダウンの最大反復数が高く、テスト後のBorg RPEが低くなりました。4
これは「好きなジャンル」を使った急性の筋力・筋持久力テストです。20人の若年男性、握力とラットプルダウンという限定された条件であり、普段の複数種目セッション、女性、異なる年齢、長期適応(用語集を新しいタブで開く)へそのまま一般化できません。
反復数は増えても、RPEや生理指標が変わらない研究
種目によって反復数だけが増え、RPEや生理指標は動かないこともあります。音楽あり対なしではなく、選好条件同士の差です。
訓練経験者19人が、自分で選んだプレイリストと最も好みではないジャンルのプレイリストで、スクワット、ベンチプレス、デッドリフト、ベントオーバーロウを各3セット限界まで行った2026年のクロスオーバー(用語集を新しいタブで開く)研究では、自分で選んだ条件でスクワットとデッドリフトの反復数が多くなりました。6
しかし、ベンチプレスとロウの反復数、RPE、心拍、筋活動、筋酸素、換気には明確な差がありませんでした。自己申告の集中とエネルギー感は高かったものの、客観的注意課題ではありません。無音条件もないため、音楽あり対なしではなく、選好条件間の差です。
この結果は、反復数、RPE、気分、生理指標が必ず一緒に動くわけではないことを示す一例です。反復数が増えた理由を、RPE低下や心拍変化だけで説明できません。
ベンチプレスの大きな先行効果は追試で再現しなかった
先行の好結果と、事前登録済み追試の結果を分けて読みます。一度の小標本の差は、同じ課題でも再現するとは限りません。
訓練男性12人の先行クロスオーバー研究は、好みのジャンルで75%1RM(用語集を新しいタブで開く)ベンチプレスの反復数、最初の3回の一部速度・パワー、動機づけが高いと報告しました。5 ただし、比較は好みの音楽対好みではない音楽で無音条件がなく、小標本でした。
この研究の事前登録済み追試では、訓練男性28人の近似再現で反復数p=0.545、動機づけp=0.084と差を確認できませんでした。男女47人の拡張試験でも反復数差はなく、RPEはp=1.00, dz=0.00でした。7
2024年4月の正誤表後、近似再現の効果はdz=−0.12、先行効果との非互換性はp=0.007となり、非再現という解釈は変わっていません。正誤表と本文でz値の符号が一致しないため、符号は採用しません。
追試失敗は「好きな音楽は誰にも効かない」という証明ではありません。しかし、男性12人の一度の好結果から「必ず反復数が増える」と言えないことは明確です。
なぜ結果がそろわないのか
好み以外の条件が同時に変わるため、結果は一つの経路では説明しにくいです。ジャンルの好み、実際に選んだ曲、その課題への適合も別です。
音楽は、曲の好みだけでなく、テンポ、音量、歌詞、記憶、実験時の気分、運動中か開始前か、種目、負荷、限界まで行うかなど多くの条件を同時に変えます。音楽研究のレビューは、覚醒調整、注意の解離、感情、動作同期など複数経路を提案しています。1
また、好きなジャンルの中にも好きでない曲があり、普段好きな曲でも高重量セットに合うとは限りません。「ジャンル選好」と「実際に選んだプレイリスト」と「その課題への適合」は別です。
RPE、RIR、気分、反復数を分けて記録する
記録は一つの「音楽効果」にまとめず、指標ごとに分けます。研究のRPEは、その課題で感じた努力・きつさです。RIR(用語集を新しいタブで開く)は「あと何回できたと思うか」で、RPEと同じではありません。気分、楽しさ、動機づけ、自己申告の集中も別の結果です。
例えば、次の組み合わせはすべて起こり得ます。
- 反復数は増えたがRPEは同じ
- 気分は良かったが反復数は同じ
- RPEは低かったが使用重量は同じ
- 好きな曲でも集中しにくかった
複数の結果を一つの「音楽効果」にまとめず、何が変わったかを分けます。
自分で比べるなら、1回で決めない
以下は研究で確立した処方ではなく、編集部による個人内比較の提案です。
- 比較する条件を「普段選ぶBGM(用語集を新しいタブで開く)」と「決めた別条件」など二つにする
- 同じ種目、近い重量、セット位置、休憩、RIR目標で交互に試す
- 実施回数、RIR、完了・未完了、体調を残す
- 音楽条件と主観はメモへ明示する
- 複数回たまってから、結果が一貫するかを見る
意図的に嫌いな音楽を使う必要はありません。無音、いつものBGM、別のセットリストなど、安全かつ現実的な条件で十分です。
ここで示した簡易な交互メモ比較は、ランダム化・盲検化などを備えた正式なN-of-1(用語集を新しいタブで開く)試験ではありません。睡眠、時刻、種目順、学習、日間変動も完全には統制できないため、音楽の因果効果は確定できません。
Kageで比較するときの制約
Kageは音楽の条件をセッションへ構造化して保存しないため、比較は手動のメモが中心です。
2026年9月時点のKageでは、BGMはKageが提供するカタログのジャンルと曲から選び、曲ごとに「再生対象」を切り替えて、対象の曲をカタログ順に再生します。個人の曲の取り込み、曲順の編集、選好評価、種目や気分に基づく自動選曲はありません。セッション開始やダウンロード完了だけでは自動再生せず、再生操作のあとは端末内に保存した曲を使います。
セッションには再生曲、ジャンル、無音条件を構造化して保存せず、BGM別の反復数・RIR・パフォーマンス分析も行いません。完了後に「履歴」→セッション詳細→「セッションメモ」で条件を書くことはできますが、手動の文脈記録です。また、Kageで任意入力できるセッション全体の努力度(1〜10)は、上記研究のBorg RPEと同一尺度ではありません。
再生の継続は、端末、OS、通信状況、イヤホン、他アプリの音声といった条件に左右されます。比較の途中で再生が止まった日は、その旨もメモに残してください。
本稿の限界
一般化できる範囲は狭いです。平均の向きと、個人・種目への適用は別問題です。
筋トレ固有研究は小標本・急性試験・若年男性中心で、種目と音楽条件も異なります。好みの音楽のメタ解析には高い異質性、出版バイアス候補、抄録と本文の数値不整合があります。
音楽選好は固定した体質ではなく、曲、気分、環境、課題で変わり得ます。個人内のメモ比較も、音楽による因果、長期筋力、筋肥大(用語集を新しいタブで開く)またはフォーム改善を証明しません。
まとめ
- 好みの音楽、自分で選んだ音楽、好みではない音楽、実験者指定、無音は別条件
- 好みの音楽が平均的に有利な研究はあるが、異質性と数値不整合がある
- 反復数、RPE、気分、心拍は同じ方向へ動くとは限らない
- ベンチプレスの先行小標本の好結果は事前登録済み追試で再現しなかった
- 自分で比べる場合も条件を分け、複数回の結果を見る
- KageはBGM条件をセッションへ構造化保存せず、BGM別分析をしない
参考文献
- Karageorghis CI, Priest DL. Music in the exercise domain: a review and synthesis (Part I). Int Rev Sport Exerc Psychol. 2012. DOI: 10.1080/1750984X.2011.631026
- Niering M, Zirkel B, Munkelt P, et al. Effects of preferred music listening on physical and psychological parameters in sports: a systematic review and meta-analysis with meta-regression. BMC Sports Sci Med Rehabil. 2025 Dec 22 [online]; 2026;18:44. DOI: 10.1186/s13102-025-01470-2
- Herodek RT, Aleksić Veljković AZ, Živković MD, et al. Effects of preferred music on internal load in adult recreational athletes: a systematic review and meta-analysis. J Sports Med Phys Fitness. 2025. DOI: 10.23736/S0022-4707.24.16178-6
- Silva NRDS, Rizardi FG, Fujita RA, Villalba MM, Gomes MM. Preferred Music Genre Benefits During Strength Tests: Increased Maximal Strength and Strength-Endurance and Reduced Perceived Exertion. Percept Mot Skills. 2021. DOI: 10.1177/0031512520945084
- Ballmann CG, McCullum MJ, Rogers RR, Marshall MR, Williams TD. Effects of Preferred vs. Nonpreferred Music on Resistance Exercise Performance. J Strength Cond Res. 2021. DOI: 10.1519/JSC.0000000000002981
- Vinovrski MF, Moll RE, Odebode JO, et al. Physiologic and Perceptual Responses During Resistance Exercise With Self-Selected and Nonpreferred Music. J Strength Cond Res. 2026. DOI: 10.1519/JSC.0000000000005265
- Hutchinson JC, Murphy J, De Lucia B, et al. Effects of Preferred versus Nonpreferred Music on Bench Press Performance: A Replication and Extension Study. Commun Kinesiol. 2024. DOI: 10.51224/cik.2024.60
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