文中の点線付き用語を選ぶと、筋トレ・記録用語集を新しいタブで確認できます。
「ベンチプレスを100kgで3セット」とだけ記録していないでしょうか。セッション合計は量の把握に役立ちますが、各セットの完了回数やRIR(用語集を新しいタブで開く)(あと何回できそうだったかの目安)を残さなければ、その合計がどう作られたかは後から復元できません。
セットごとの記録は、成長を直接生み出す刺激ではありません。本記事で確認した文献の範囲では、セット別記録そのものが筋力・筋量を増やすかを検証した直接介入研究は確認できませんでした。それでも、実施内容を比較できる形で残すことには、次回の負荷、休憩、セット配分を決めるための実務的な価値があります。
「筋トレをセットごとに記録する理由|合計だけでは見えない回数・RIRの変化」では何を確認する?
「ベンチプレスを100kgで3セット」とだけ記録していないでしょうか。関連資料 1図解の参照資料 3件
この記事の要点
- 同じ総回数・総負荷量(用語集を新しいタブで開く)でも、各セットの回数配分とRIRは異なり得る
- 各ワークセット(用語集を新しいタブで開く)で重量、完了回数、RIRを残す
- セット数は量の指標として重要だが、セットの中身は表しきれない
- 前回比較は同じ種目、器具、入力方式、セット位置で行う
- 1回の不調から筋力低下やオーバートレーニングを断定しない
記録は次回の判断材料に変換して初めて循環する
- 01記録する重量・回数・RIRを残す
- 02同条件で見る前回と今回を分けて確認
- 03差を言葉にする変化と条件をメモ
- 04次回へつなぐ記録を判断材料にする
セッション合計だけでは見えない情報がある
結論は単純です。合計が同じでも、セット配分が違えば実施内容は別物です。次の2つのトレーニングは、どちらも総回数18回、重量×回数で計算した総負荷量は1,800kgです。
A:100kg×6回、6回、6回
B:100kg×8回、6回、4回
合計だけを見れば同じです。しかしAは3セットを一定の回数でそろえ、Bは1セット目から最終セットまで4回低下しています。
ここへRIRを加えると、さらに違いが見えます。
A:6回・RIR 2、6回・RIR 2、6回・RIR 2
B:8回・RIR 1、6回・RIR 0、4回・RIR 0
Bでは前半に多くの反復を行い、後半ほど限界へ近づいています。ただし、原因が休憩不足なのか、1セット目の配分なのか、睡眠や体調なのかは、この記録だけでは断定できません。
セット別記録が示すのは「何が起きたか」であり、「なぜ起きたか」は他の条件と合わせて考える必要があります。次の文献は、負荷を一つの集計値に還元できない、という読み方です。何が「正しい合計指標か」は断定していません。
抵抗トレーニングの負荷は、種目、重量、セットと回数、休憩、反復速度など複数の変数から構成されます。単一の集計値ですべてを表す方法には、現在も統一見解がありません。1
各セットで重量・回数・RIRは変化する
同じ種目を同じ重量で行っても、反復回数やRIRは一定とは限りません。セットを重ねるにつれて疲労が蓄積すれば、完了回数が減ったり、同じ回数でも限界に近づいたりします。次の3項目を各ワークセットで残します。
- 実際に使用した重量
- 完了した回数
- セット終了時のRIR
RIRは「あと何回できそうだったか」を表す主観的な尺度です。RIR 0は追加の1回を完了できないと感じた状態、RIR 2はあと2回ほど可能だったという意味です。
次の研究が示すのは、限界に近いほど予測が合いやすい、という傾向です。セット終了後の日常入力そのものを検証した研究ではありません。
Zourdosらは、トレーニング経験のある男性25人が70%1RM(用語集を新しいタブで開く)のスクワットを限界まで行う過程で、RIR予測の精度を検討しました。予測は限界に近いほど正確になり、限界から遠い時点や総反復数が多いセットほど誤差が大きくなりました。2 ただし、この研究はセット途中の予測を検証したもので、通常のセット終了後に入力するRIRを直接検証したものではありません。RIRは厳密な実測値ではなく、自分の推定傾向を長期的に比較するための補助指標として扱います。
RIRはセット直後に記録し、1回分の差よりも複数回の傾向を見る補助情報として使います。
合計セット数は重要だが、セットの中身も必要
週間セット数は、筋力や筋肥大(用語集を新しいタブで開く)を考える際の代表的なトレーニング量です。セット数が刺激の一部であることと、セットの中身まで同じとは限らないことを分けて読みます。
Ralstonらが9研究を統合したメタ解析(用語集を新しいタブで開く)では、週間セット数が多い条件は、少ない条件より筋力向上が大きい傾向を示しました。ただし群間差の効果量(用語集を新しいタブで開く)は小さく、対象者やプログラムによる違いもあります。3
健康な18〜35歳のトレーニング経験者を主対象としたBaz-Valleらの系統的レビュー(用語集を新しいタブで開く)では、他の条件をそろえ、6〜20回以上の範囲で限界または限界近くまで行う場合、総セット数は筋肥大向けトレーニング量の実用的な指標になり得ると整理されています。一方、初心者、高齢者、疾患・傷害がある人に同じ結論をそのまま適用できず、最適なセット数の断定には追加研究が必要です。4
これらは「セットを記録すれば成長する」という研究ではありません。実施したセット数がトレーニング刺激の一部である以上、予定セット数ではなく、実際に完了したセットを正確に数える理由を支える研究です。
また、同じ1セットでも、余裕を大きく残したセットと限界近くまで行ったセットを完全に同じ刺激とみなせるとは限りません。可動域(用語集を新しいタブで開く)、テンポ、休憩、限界への近さでも解釈は変わります。5 そのため、セット数に重量・回数・RIRを添えると、実施内容をより具体的に説明できます。
重量と回数が同じでも「同じセット」とは限らない
セットを比較する前に、条件がそろっているか確認します。次のレビューは、重量と回数以外の変数も刺激に関わる、という整理です。どの変数が常に最重要かは断定していません。
Coratellaのレビューでは、重量と反復回数だけでなく、限界到達の有無、可動域、動作時間、筋収縮様式、休憩などもトレーニング刺激に関わる変数として挙げられています。5
次の条件が大きく変わった場合はメモを残します。
- フリーウェイトとマシンの違い
- マシンのメーカーや製品
- 可動域やフォーム
- 反復テンポ
- セット間休憩
- ストラップや補助の使用
- 種目を行った順番
たとえば、前回より5kg増えていても、可動域が短くなった、別のマシンへ変更した、補助が入った場合は、単純な自己ベスト(用語集を新しいタブで開く)とは判断できません。
すべての条件を毎回長文で書く必要はありません。自分の標準を決め、変わった日だけメモするのが現実的です。
前回の同じセットと比較する方法
前回比較の手順は次の4つです。条件をそろえ、同じセット位置を見、重量・回数・RIRを並べ、1回の不調で結論を出さない、です。
1. 同じ条件の記録を選ぶ
種目、器具、重量の入力方式、左右の記録方法が一致する履歴を使います。マシンやフォームを変えた場合は、新しい基準として扱います。
2. 1セット目同士、2セット目同士を比べる
1セット目は更新できても、2・3セット目が大きく低下している場合があります。逆に最高記録は変わらなくても、後半セットの反復数を維持できた可能性があります。
3. 重量・回数・RIRを一緒に見る
進歩の候補は重量更新だけではありません。
- 同じ重量・同じRIRで回数が増えた
- 同じ重量・同じ回数でRIRが増えた
- 重量を増やしても回数とRIRを維持できた
- 1セット目だけでなく後半セットも維持できた
RIRには推定誤差があるため、1項目だけで判断せず、重量と回数も確認します。
4. 1回の不調で結論を出さない
1セッションの低下だけで筋力低下やオーバートレーニングとは判断できません。数回の同条件記録を並べ、必要に応じて休憩、種目順、睡眠、体調の違いを確認します。
kageでセットごとに前回と比べる
前回と同じセット位置を、実行中に並べて見るための機能です。
kageでは比較対象がある場合、実行中のセットに「前回 同セット」の重量、実績回数、RIRが表示されます。今回のセット位置と対応させるため、「前回の最高セット」だけを見る場合とは異なる比較ができます。
完了後は記録した重量・回数を修正でき、RIRはセットの感覚が残っているレスト画面で入力できます。RIRは任意で、未記録も未記録のまま扱われます。
左右別種目は左右両方の完了で1つの論理セット(用語集を新しいタブで開く)として保存し、片側で終了した場合は部分セットとして保持します。kageのウォームアップ提案は、記録するワークセットとは別に表示され、履歴・ボリュームには含まれません。
分析では最大重量、総レップ(用語集を新しいタブで開く)、ワークセット、総仕事量、推定筋力を確認できます。ただし、セット数や総仕事量の増減は、それだけで良い・悪いを表す評価ではありません。各セットの実績へ戻り、どのように作られた数字かを確認することが大切です。
まとめ
セットごとの記録が重要なのは、セッション合計では失われる情報を残せるからです。同じ重量、同じ総回数、同じ総負荷量でも、各セットの回数配分やRIRは異なる場合があります。
重量・回数・RIRを各ワークセットで記録すれば、前回と同じ条件で何が変わったかを確認できます。前回を超えるとは、必ずしも毎回重量を増やすことではありません。同じ重量をより多く、同じ回数をより余裕を持って、あるいは後半セットまで安定して行うことも、記録から確認できる変化です。
参考文献
- Scott BR, Duthie GM, Thornton HR, Dascombe BJ. Training Monitoring for Resistance Exercise: Theory and Applications. Sports Medicine. 2016. DOI: 10.1007/s40279-015-0454-0
- Zourdos MC, et al. Proximity to Failure and Total Repetitions Performed in a Set Influences Accuracy of Intraset Repetitions in Reserve-Based Rating of Perceived Exertion. Journal of Strength and Conditioning Research. 2021. DOI: 10.1519/JSC.0000000000002995
- Ralston GW, Kilgore L, Wyatt FB, Baker JS. The Effect of Weekly Set Volume on Strength Gain: A Meta-Analysis. Sports Medicine. 2017. DOI: 10.1007/s40279-017-0762-7
- Baz-Valle E, Fontes-Villalba M, Santos-Concejero J. Total Number of Sets as a Training Volume Quantification Method for Muscle Hypertrophy: A Systematic Review. Journal of Strength and Conditioning Research. 2021. DOI: 10.1519/JSC.0000000000002776
- Coratella G. Appropriate Reporting of Exercise Variables in Resistance Training Protocols: Much more than Load and Number of Repetitions. Sports Medicine - Open. 2022. DOI: 10.1186/s40798-022-00492-1
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この記事は一般的なトレーニング情報であり、診断、治療、個別の医療助言ではありません。単日の記録から、回復状態、傷害、オーバートレーニングを診断することはできません。
